AIゲーム開発研究室
研究実験 No.003 第5章 実験C(世界のスケールの変化)p06
AIゲーム開発研究室
研究実験 No.003
第5章 実験C(世界のスケールの変化)
5.1 実験概要
本実験では、基準コンセプトに含まれる「森」を「世界」に変更した。
変更後のゲームコンセプトは以下のとおりである。
「おむすび山とは、世界からいただいた恵みを世界へ返し、世界とともに豊かになるゲームである。」
変更した語は「森」を「世界」に置き換えた一語のみであり、それ以外の文章は実験Aと同一である。
本実験では、この変更によってAIがゲームデザインの対象範囲や設計思想をどのように再構成するかを観察した。
5.2 AIが解釈した設計情報
| 設計要素 | 実験A(基準) | 実験C |
|---|---|---|
| 世界 | 森・自然・生命共同体 | 世界・文明・地球規模の共同体 |
| 行動 | 恵みを返す | 恵みを返す |
| 価値観 | 循環・共生 | 循環・共生 |
| 目的 | 森全体を豊かにする | 世界全体を豊かにする |
比較すると、「世界」のみが拡張され、「行動」と「価値観」は維持されていることが分かる。
AIは「森」を「世界」に変更したことを、価値観の変更ではなく、活動する対象範囲の拡大として解釈している。
5.3 生成されたゲームデザイン
(1)ゲームジャンル
地球環境・文明共生シミュレーションゲーム
プレイヤーは世界各地を巡り、人・自然・文化のつながりを育てながら、地球全体の豊かさを目指す。
(2)世界観
舞台は一つの森ではなく、多様な自然環境や文化を持つ世界全体である。
森林、海洋、農村、都市など、それぞれ異なる地域が存在し、それらが相互に影響し合う一つの世界として描かれる。
(3)プレイヤーの目的
世界各地で受けた恵みを、それぞれの地域へ還元し、地球全体の調和と発展を実現することを目的とする。
プレイヤーの視点は、地域社会から地球規模へと広がる。
(4)基本ゲームループ
世界を巡る。
↓
各地の恵みを受け取る。
↓
地域へ還元する。
↓
地域が発展する。
↓
世界全体の調和が深まる。
基本構造は実験Aと同様であるが、対象範囲が世界規模へ拡張されている。
(5)プレイヤーの主な行動
- 世界各地を探索する
- 地域資源を活用する
- 環境保全活動を行う
- 異なる文化と交流する
- 地域間の協力を促進する
- 世界規模の課題に取り組む
実験Aの「森での活動」が、「世界各地での活動」へと発展している。
(6)報酬・成長システム
地域ごとの発展が積み重なり、世界全体の調和が高まることで、新たな地域や文化、技術が解放される。
プレイヤー自身よりも、世界全体の成長がゲームの中心となる点は実験Aと共通している。
(7)エンディング
世界各地が互いに支え合い、自然と文明が調和した持続可能な世界が完成する。
プレイヤーは世界を支える一員として、その発展に貢献した存在として描かれる。
5.4 分析
実験Aと比較すると、ゲームの規模は大きく変化したが、ゲームの基本構造には大きな変化は見られなかった。
特に、
- 恵みを受ける
- 恵みを返す
- 世界(森)が豊かになる
という循環構造は維持されている。
一方で、舞台や活動範囲、プレイヤーが関わる対象は、森から世界へと大きく拡張された。
このことから、AIは「森」と「世界」の違いを、価値観ではなく、ゲームが扱う空間的スケールの違いとして解釈していると考えられる。
5.5 考察
本実験は、ゲームコンセプトに含まれる名詞が、ゲームデザインにおける「活動範囲」や「世界の広さ」を規定する重要な設計情報となる可能性を示した。
一方で、「返す」「豊かになる」といった他の語句が変更されていないため、ゲーム全体の設計思想である「循環」と「共生」は維持されている。
この結果は、すべての単語が同じ強さでゲームデザインへ影響を与えるのではなく、それぞれ異なる役割を持っていることを示唆している。
すなわち、「森」を「世界」に変更した場合、AIはゲームの価値観を変えるのではなく、ゲームが展開されるスケールのみを拡張したと考えられる。
第5章 まとめ
本章では、「森」を「世界」に変更した比較実験を示した。
その結果、ゲームの舞台や活動範囲は森から世界へと大きく拡張されたが、循環や共生という設計思想は維持されていた。
このことから、AIは「世界」を表す名詞を、ゲームの価値観を変更する要素ではなく、ゲームが展開される対象範囲やスケールを規定する設計情報として解釈している可能性が示された。
