AIゲーム開発研究室
研究実験 No.003 第10章 実験結果の比較分析 p11
AIゲーム開発研究室
研究実験 No.003
第10章 実験結果の比較分析
10.1 比較分析の目的
第3章から第9章では、基準コンセプトと六つの比較コンセプトを用いて、AIが生成するゲームデザインの変化を観察した。
本章では、それら七つの実験結果を比較し、ゲームコンセプトを構成する単語がゲームデザインにどのような影響を与えているかを整理する。
本研究の目的は、各実験の優劣を評価することではなく、コンセプトの変化とゲームデザインの変化との対応関係を明らかにすることである。
10.2 実験結果の比較
表10-1に、各実験で主に変化した設計要素を示す。
| 実験 | 変更した語 | 主な変化 |
|---|---|---|
| A | 基準 | 循環を中心としたゲームデザイン |
| B | 返す→分け合う | 価値観・共同体の在り方 |
| C | 森→世界 | 世界のスケール |
| D | 豊か→幸せ | ゲームの評価基準・到達目標 |
| E | いただいた→集める | プレイヤー行動・ゲームループ |
| F | 豊かになる→守る | ゲーム全体の設計思想 |
| G | 豊かになる→秘密を知る | 探究・学習を中心としたゲーム体験 |
比較すると、変更した単語によって、変化する設計要素が異なっていることが分かる。
10.3 変化した要素と維持された要素
各実験を比較すると、すべてが大きく変化したわけではない。
例えば、
実験Cでは、
ゲームの舞台は森から世界へ拡張されたが、
「循環」
「恵みを返す」
という設計思想は維持されていた。
また、
実験Eでは、
プレイヤー行動は変化したが、
ゲーム全体の価値観は維持されていた。
一方、
実験Fでは、
ゲームループ、
プレイヤーの役割、
報酬システム、
エンディングまでが一貫して変化していた。
このことから、
ゲームコンセプトを構成するすべての単語が同じ影響力を持つわけではなく、
変更する語によって、
ゲームデザインへ与える影響の範囲が異なることが確認された。
10.4 設計情報の役割
本研究では、生成されたゲームデザインを比較した結果、
ゲームコンセプトを次の四つの観点で整理すると、
各実験を一貫して説明できることが分かった。
- 世界
- 行動
- 価値観
- 目的
例えば、
「森」
を変更すると、
ゲーム世界の広さが変化した。
「集める」
を変更すると、
プレイヤー行動が変化した。
「分け合う」
を変更すると、
ゲーム全体の価値観が変化した。
「守る」
や
「知る」
を変更すると、
ゲーム全体の目的や設計思想が変化した。
この結果は、
ゲームコンセプトが単なる説明文ではなく、
複数の設計情報によって構成されている可能性を示している。
10.5 ゲームコンセプトは設計情報である
本研究で実施した七つの比較実験では、
一語のみを変更したにもかかわらず、
AIはゲームデザイン全体を一貫して再構成した。
これは、
AIがゲームコンセプトを単なる文章として処理しているのではなく、
ゲームを設計するための情報として利用している可能性を示している。
もちろん、本研究だけでAIの内部処理を明らかにすることはできない。
しかし、少なくとも本研究で観察された生成結果においては、
ゲームコンセプトを構成する語が、
ゲームジャンル、
ゲームループ、
プレイヤー体験、
報酬システム、
ゲーム全体の設計思想へ影響を与えていることが確認された。
10.6 本研究で得られた知見
本研究から、次の知見が得られた。
第一に、
ゲームコンセプトを構成する単語は、
ゲームデザインに対して異なる役割を持つ可能性がある。
第二に、
一語のみの変更であっても、
ゲームデザイン全体が一貫して再構成される場合がある。
第三に、
ゲームコンセプトは、
ゲームデザインを方向付ける設計情報として機能している可能性がある。
これらの知見は、
AI時代のゲーム企画を体系化する上で、
ゲームコンセプトそのものを設計対象として捉える必要性を示している。
第10章 まとめ
本章では、七つの比較実験を総合的に分析した。
その結果、変更した単語によって影響を受ける設計要素は異なり、ゲームコンセプトを構成する語は、それぞれ異なる役割を担っている可能性が示された。
また、本研究では、生成されたゲームデザインを「世界」「行動」「価値観」「目的」という四つの観点で整理することで、各実験の違いを一貫して説明できることが分かった。
これらの分析結果を踏まえ、次章では、本研究で得られた知見を基に、**「AIゲームコンセプト設計モデル Ver.1.0」**を提案する。
