AIゲーム開発研究室

2026-08-25 23:18:00

AI時代の「公式キャラクターデザイン確定工程」

AIゲーム開発研究室

ゲーム開発ドキュメント

キャラクター4面図を作って分かったこと

― AI時代の「公式キャラクターデザイン確定工程」

ゲーム「おむすび山のなかまたち」の制作を進めています。

これまで、ゲームの背景、前景、キャラクターのアクション素材などを制作してきました。

そして今回、パンタ以外のキャラクターについても、正面・左右側面・背面を描いた「4面図」を作ることにしました。

ただし、制作を始めた時点では、この工程をそれほど重要なものだとは考えていませんでした。

2Dゲームで使用するキャラクター素材は、実際にはゲーム画面で必要となる方向やポーズを個別に制作していきます。

そのため、

「4面図が本当に必要なのかは分からない。でも、キャラクターの基準資料として作っておこう」

という程度のところから始めたのです。

ところが、実際に作ってみると話が変わってきました。

4面図を作るという作業によって、それまで気づかなかった問題が次々と見えてきたのです。

そして最終的には、

4面図は単なるキャラクター資料ではなく、公式キャラクターデザインを確定するための重要な工程ではないか

と考えるようになりました。


絵本のキャラクターは、本当に同じデザインだったのか

「おむすび山のなかまたち」のキャラクターたちは、これまで絵本の中で何度も描かれてきました。

パンタ、コンタ、ミミ、リン、ポン。

どの画像を見ても、それぞれ同じキャラクターとして認識できます。

ところが、今回4面図を制作するために過去の画像を改めて比較してみると、細部にはかなりの違いがあることが分かりました。

特に分かりやすかったのが、ミミです。

画像によってリュックがあったりなかったりします。

ポシェットの形も完全には同じではありません。

ワンピースの柄や細部のデザインにも違いがあります。

これまで絵本として見ていると、それほど気になりませんでした。

場面が変わり、ポーズが変わり、背景が変われば、多少の違いがあっても「ミミ」として成立していたからです。

ところが、

「では、ミミの正式なデザインはどれなのか?」

と聞かれると、答えられない。

ここで初めて問題が明確になりました。


そして、もっと大きな間違いを発見した

過去の基準画像を確認している途中で、さらに面白いものを発見しました。

ミミは、うさぎです。

当然、尻尾は小さく丸いうさぎの尻尾です。

ところが、これまで何度も基準画像として使用していた絵本画像のミミには、

なぜかリスのような大きな尻尾がついていました。

今まで気づきませんでした(笑)。

さらに面白いのは、その画像を基準画像として使っていたにもかかわらず、その後生成された多くのミミには、ちゃんとうさぎの尻尾が描かれていたことです。

つまり画像生成AIは、添付された画像の特徴を何も考えずにそのまま複製していたわけではありません。

「ミミはうさぎである」という情報や、他の視覚的特徴などを含めて解釈した結果、誤っていた尻尾をうさぎの尻尾へ戻していたと考えることもできます。

もちろん、毎回そのように都合よく修正してくれる保証はありません。

しかし少なくとも、

基準画像に描かれているものが、そのまま絶対的なキャラクター仕様になるわけではない

ことは分かりました。

これは生成AIを使って継続的にキャラクターを制作するとき、かなり重要な問題です。


「過去の画像を忠実に再現してください」では解決しない

ここで一つ困ったことが起きます。

過去の画像そのものに違いがあるのですから、

「添付画像を忠実に再現してください」

と指示しても、公式デザインは決まりません。

リュックはあるのか、ないのか。

ワンピースはどの柄なのか。

ポシェットはどの形なのか。

どれも過去作品の中に複数の答えがあります。

そこで方針を変えました。

過去の画像を「絶対的な正解」として扱うのではなく、

これまで描かれてきたキャラクターを確認するための資料

として扱うことにしたのです。

そして複数の画像に共通する特徴を残しながら、曖昧だった部分については、この機会に正式なデザインを決めることにしました。


ミミの公式デザインを決める

例えばミミでは、今回の制作によって、

ピンクの花柄ワンピース

白い襟

胸元の小さな白いリボン

ピンクのリュック

黄色いポシェット

頭のピンクのリボン

小さく丸いうさぎの尻尾

という基本デザインを整理しました。

特にワンピースの柄は、それまでかなり複雑で、画像によって変化していました。

そこで今回は、小さな白い花柄として整理しました。

ここで一つ、新しい問題も見えてきます。

従来のキャラクターデザインでは、デザイナーが描くことのできるデザインであれば成立します。

しかし生成AIによって大量のゲーム素材を制作する場合、それだけでは十分ではないかもしれません。

毎回違う模様になってしまうような複雑なデザインより、

繰り返し生成しても同じキャラクターとして再現しやすいデザイン

の方が適している可能性があります。

つまりAI時代には、

「生成AIが安定して再現できるか」

という条件そのものが、キャラクターデザインの一部になるかもしれません。


4面図にすると、体形まで見えてくる

ミミの最初の4面図は、かなり良い出来でした。

顔もかわいい。

衣装もいい。

リュックもポシェットも描かれています。

ところが、4方向のミミを横に並べて見ていると、どうしても気になることがありました。

少し背が高い。

絵本の中では気にならなかったのですが、キャラクターだけを取り出して並べると、少し大人びた体形に見えます。

そこで、

頭を大きくする。

胴体を小さくする。

腕を短くする。

脚を短くする。

全体をコンパクトにする。

という方向で再調整しました。

その結果、より幼いミミらしいプロポーションになりました。

ここでも4面図の意味が変わります。

4面図は衣装や持ち物を確認するだけではありません。

キャラクターの頭身や身体のシルエットを検証するための資料にもなる。

これは実際に4面図を作るまで気づかなかったことでした。


「左側面」と書くだけでは左側面にならない

もう一つ苦労したのが、左右の側面です。

最初のミミでは、4体描かれているにもかかわらず、

左右の側面が同じ方向を向いていました。

確かに4体あります。

でも4面図ではありません(笑)。

そこでプロンプトの書き方を変更しました。

単に、

「左側面」

「右側面」

と書くのではなく、

正面 | ← 左向き側面 | 背面 | 右向き側面 →

と、完成画像上で鼻先がどちらを向くのかまで明示しました。

さらに、

「同じキャラクターを、その場で90度ずつ回転させて見ている」

と説明しました。

この考え方を取り入れてから、結果はかなり安定しました。

その後制作したコンタでは、ほぼ一回で4方向が成立しました。


一人目の失敗が、次のキャラクターを作る

ここから制作が面白くなってきました。

ミミでは何度も試行錯誤しました。

ところが、その失敗から得た情報を次のプロンプトへ組み込んでコンタを生成すると、最初からかなり完成度の高い4面図が生成されました。

つまり、

一人目で失敗したことが、二人目では最初から解決されている。

そしてコンタで得た結果を、さらにポンへ引き継ぎます。

こうしてキャラクターを一体作るごとに、4面図を生成するための方法そのものが成長していきました。

これは単なるプロンプトの使い回しではありません。

生成結果を検証し、問題を発見し、その問題を次の生成方法へ反映する。

実制作を通して、制作方法そのものが更新されていったのです。


ポンでは「存在しなかった公式デザイン」を作ることになった

ポンでは、さらに一歩進みました。

過去画像を見ると、頭に葉っぱがあるものとないものがあります。

首元のデザインにも違いがあります。

体形にも差があります。

リュックの細部も一定ではありません。

そこで今回は、どれか一枚の画像を正解とするのをやめました。

そして、

頭には緑色の葉っぱ

オレンジ系の革製の首輪

オレンジ色のリュック

太くて縞模様のある尻尾

少し小太りで、ころんとした体形

を、今後のポンの公式デザインとして決定しました。

これは、過去画像の再現ではありません。

過去作品を資料として利用しながら、

これから使用するポンのデザインを新たに確定した

ことになります。

ここまで来ると、4面図制作は明らかに単なる資料制作ではありません。

キャラクターデザインそのものの工程です。


詳しく指示すれば、必ず良くなるわけでもない

ポンの制作では、もう一つ面白い出来事がありました。

プロンプトを調整している途中で、意図せず画像生成が始まってしまいました。

ところが、その画像がかなり良かったのです。

その後、条件をきちんと整理した詳細なプロンプトで改めて生成しました。

しかし絵として見れば、

意図せず生成された最初の画像の方が魅力的に感じる部分もありました。

最終的には4面図としての整合性などを考えて別の画像を採用しましたが、ここからも重要なことが分かります。

プロンプトを詳しく書けば書くほど、必ず良い画像になるわけではない。

生成AIには偶発性があります。

そして、その偶発性から生まれたものを「失敗だから」と捨てるのではなく、人間が見て判断する必要があります。


リンのポシェットは、尻尾がうまく隠してくれた

リンにも特徴的な問題がありました。

リンが持っている黄色いポシェットは、これまでの絵本を見ると、意外に凝った形をしています。

単に、

「黄色いポシェット」

と指示すると、一般的な肩掛けバッグになってしまう可能性があります。

そこで過去の絵本画像を直接参照させました。

生成された4面図を見ると、完全に構造を解決したわけではありません。

ところがリンには、大きな尻尾があります。

その尻尾が、ポシェットの背面側をうまく隠してしまいました(笑)。

しかし、キャラクター基準として見ると問題ありません。

正面と側面から、ポシェットの特徴は十分確認できます。

ここで改めて考えました。

キャラクター4面図は、機械設計図ではありません。

すべての部品構造を完全に露出させることが目的ではない。

今後、そのキャラクターを同じキャラクターとして再現するために必要な情報が確認できればよい。

そう考えると、これも十分に成立しています。


最後に、もう一度ミミへ戻った

コンタ、ポン、リンの4面図を制作した後、最初に苦労したミミをもう一度作ってみることにしました。

今度は、最初のときとは条件が違います。

それまでの制作から、

左右方向をどう指示するか。

4方向をどうやって同一人物として認識させるか。

背景を完全透明にするにはどう指示するか。

余計な文字や設定表を出させないためにはどうするか。

デザインを変えずに体形だけを幼くするにはどう記述するか。

さまざまな知見が蓄積されています。

さらに、先に制作したミミの画像そのものも新しい基準画像として使用できます。

そして再生成しました。

結果は、

最初のミミより幼い体形になり、左右側面も正しい方向になりました。

最初の失敗から始まり、

ミミ

コンタ

ポン

リン

再びミミ

と一周したことで、最初のキャラクターまで改善されたことになります。

これは非常に興味深い制作過程でした。


4面図は「完成したデザインを記録するもの」だけではなかった

今回、最初に考えていた工程は単純でした。

キャラクターがいる。
だから4面図を作る。

ところが実際にやってみると、そうではありませんでした。

複数の過去作品を見る。

デザインの揺れを発見する。

何を残し、何を変更するか判断する。

曖昧だった部分を決定する。

対話AIがそれを言語化する。

画像生成AIが4面図として可視化する。

人間が結果を見る。

問題があれば再び対話する。

修正する。

そしてようやく、

「これを公式デザインとする」

と決定する。

つまり実際に起きたのは、

過去作品

比較・検証

デザインの揺れを発見

公式仕様を決定

プロンプトとして言語化

4面図を生成

人間による評価

修正

公式キャラクターデザイン確定

という工程でした。

4面図は、その最後に作られる資料ではありませんでした。

4面図を作ること自体が、キャラクターデザインを確定するための工程になったのです。


AI時代のキャラクターデザイン工程

今回の制作では、人間だけがキャラクターを設計したわけではありません。

画像生成AIだけが設計したわけでもありません。

人間は過去画像を見て、

「これは残す」

「これは違う」

「こちらの方がかわいい」

「もう少し幼くしたい」

「このリュックは必要」

と判断しました。

対話AIは、その判断を整理し、矛盾を発見し、画像生成AIへ渡す仕様として言語化しました。

画像生成AIは、その仕様を視覚化しました。

そして生成された画像を見た人間が、再び判断しました。

つまり、

人間 → 対話AI → 画像生成AI → 人間

という循環によって、キャラクターデザインが確定していきました。

これは、最初から完成したデザインをAIに描かせる工程とは少し違います。

AIとの対話と生成結果そのものを使って、デザインを発見し、確定していく工程

です。


やってみなければ分からなかった

今回の4面図制作は、最初から研究として大きな成果を期待して始めたものではありません。

むしろ、

「必要ないかもしれないけれど、とりあえず作っておこう」

というところから始まりました。

しかし実際にやってみると、

過去作品のデザインの揺れが見つかりました。

基準画像そのものの間違いも見つかりました。

キャラクターの体形の問題も見つかりました。

生成AIが再現しやすいデザインについて考えることになりました。

左右側面を安定して生成する方法も見つかりました。

一体目で得た知見を次のキャラクターへ継承できました。

そして最終的には、5人の公式キャラクターデザインを改めて確定することができました。

最初から方法論を考えていただけでは、おそらくここには到達しませんでした。

実際に作ったから、問題が見えた。

問題が見えたから、方法が生まれた。

AIを使ったゲーム開発では、この繰り返しそのものが研究なのだと思います。

そして今回、

「キャラクター4面図制作」

として始めた小さな工程から、

「AI時代の公式キャラクターデザイン確定工程」

 

と呼べるものが、一つ見えてきました。