AIゲーム開発研究室
キャラクターアクション素材をAIと共同制作する
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ゲーム開発ドキュメント
キャラクターアクション素材をAIと共同制作する
今回の制作では、「森のどんぐり大作戦」に登場する5人のキャラクター、
パンタ、コンタ、ポン、リン、ミミ
のゲーム用アクション素材を制作した。
当初、この工程を始めたときには、まず各キャラクターの4面図を制作することに、それほど大きな意味があるとは考えていなかった。
ゲーム画面では正面や側面など、限られた方向からしかキャラクターを使用しない可能性がある。
そのため4面図は、
「必要になるかどうかは分からないが、キャラクターの基準資料として、とりあえず作っておこう」
という程度の位置づけから始まった。
ところが、実際にアクション素材の制作を進めてみると、この4面図が非常に重要な役割を果たすことになった。
4面図は「使う画像」ではなく「AIへ渡す設計資料」だった
今回制作した4面図は、
- 正面
- 側面
- 背面
- 反対側面
から、同じキャラクターを描いたものである。
重要なのは、4面図そのものをゲームで使用するかどうかではない。
画像生成AIがキャラクターの立体的な構造を理解するための基準資料として機能したこと
である。
顔だけではなく、
体形、手足の長さ、尻尾、リュック、ポシェット、衣服、帽子、スカーフなどを、複数方向から確認できる。
その結果、その4面図を基準画像としてアクション素材を生成すると、異なる角度や大きなポーズを取らせても、同じキャラクターとしての一貫性を維持しやすくなった。
これは実際に制作してみなければ分からなかった。
アニメーションを作らせることをやめた
これまでの実験では、画像生成AIに、
「歩行アニメーションを作る」
「右足と左足を交互に動かす」
「何コマ目では右足を前へ出す」
といった指示を与え、連続したアニメーションそのものを生成させようとした。
しかし、この方法では思ったような結果が得られなかった。
足の運びを細かく指定しても、すべて似たようなポーズになったり、左右の脚の関係が崩れたりする。
そこで今回は、考え方そのものを変更した。
画像生成AIに完成したアニメーションを作らせない。
代わりに、
一つの動作に対して、多数の「候補ポーズ」を生成してもらう。
そして、その中からゲームに使用できそうなポーズを人間が選択する。
選択した画像を連続表示し、キャラクターそのものの移動や上下運動はUnity側で制御する。
この方式を採用した。
AIにポーズを考えさせる
さらに今回、もう一つ大きく方針を変えた。
以前は、
「右脚を前へ」
「左脚を後ろへ」
「身体を何度傾ける」
といったように、人間側がポーズを細かく決めようとしていた。
しかし今回は、あえてそれをやめた。
画像生成AIに、
「このキャラクターなら、どんな動きをすると魅力的なのか」
を考えさせることにした。
もちろん最低限の条件は指定する。
たとえばパンタ、コンタ、ポンでは、
頭の上に籠を載せ、両手で支える。
リンとミミでは体形を考慮して、
胸の前で籠を両手で抱える。
さらに籠の中のどんぐりは、全キャラクター共通で2個とした。
キャラクターの公式デザイン、装備、籠の持ち方など、ゲームとして守らなければならない条件は人間が決める。
しかし、
その状態でどんなポーズを取るかについては、画像生成AIにかなり大きな自由を与えた。
すると、予想以上に面白い結果が得られた。
「正しい動き」ではなく「使いたくなる動き」が生まれた
生成された画像には、
走っているようなポーズ、
大きく脚を開いたポーズ、
小さく跳ねているポーズ、
身体を沈めたポーズ、
片脚を上げたポーズ、
身体を傾けたポーズなど、
人間側では最初から思いつかなかった動きが多数含まれていた。
特にリンでは、右移動用として生成した画像から、非常に軽快な走行アクションを構成できそうな候補が得られた。
ミミでは、大きな耳そのものが動きの一部となり、リンとはまったく異なる移動表現が生まれた。
ポンは丸い身体と大きな尻尾を使った、少し重そうで愛嬌のある動きになった。
コンタには、キツネらしい軽快さが現れた。
そしてパンタは、短い脚と丸い身体を使って一生懸命進んでいるような、パンタ独自の動きになった。
興味深いのは、
「キャラクターごとに違う動きを作れ」と細かく指定していない
ことである。
同じ「右方向へ移動する」という目的を与えても、キャラクターデザインそのものの違いから、それぞれ異なる動きが生成された。
キャラクターの個性は、動きからも生まれる
ゲーム設計の初期段階では、
「リンは速い」
「ポンは遅い」
「コンタは滑る」
「ミミは跳ねる」
といった個性を、あらかじめゲームシステム側から与えることを考えていた。
しかし今回の制作によって、この考え方も少し変わった。
先にキャラクターの動きを決める必要はないのかもしれない。
まず画像生成AIにさまざまなポーズを作らせる。
その結果を見て、
「このキャラクターは、この動きが似合う」
と判断する。
そしてUnity側で移動速度、ジャンプ量、上下動、加速、減速などを調整する。
つまり、
キャラクター設定 → 動きを制作する
という一方向だけではなく、
生成された動き → キャラクターのゲーム上の個性を発見する
という逆方向の設計も可能になる。
これはAIをゲーム制作へ導入することで生まれた、非常に興味深い制作方法だと思う。
「失敗画像」が問題ではなくなった
今回の方法には、もう一つ大きな利点があった。
一枚の画像の中に多数の候補ポーズを生成するため、すべてが完璧である必要がない。
実際、一部には、
籠の形が少し変化したもの、
キャラクターの一部に不自然さがあるもの、
ゲームには使いにくいポーズなども存在した。
しかし、8枚生成して6枚使えるのであれば、それでよい。
10枚生成して3枚が非常に良ければ、その3枚を使えばよい。
ここでは、
生成画像全体の完成度を評価する必要がない。
目的は、
ゲームに使える素材を発見すること
だからである。
これは完成したスプライトシートを一度に生成しようとする方法とは、根本的に異なる。
パンタを作り直す
今回、最後にパンタの素材を改めて制作した。
パンタにはすでに以前制作したアクション素材が存在していた。
しかし、他の4キャラクターを、
4面図 → 大喜び → 籠あり上下アクション → 籠あり右移動アクション
という新しい工程で制作した結果、パンタだけが以前の制作方法による素材として残ることになった。
比較すると、その違いは明らかだった。
そこでパンタについても、まず新しい公式4面図を制作し直した。
その4面図を基準として、
大喜び、
頭上に籠を載せた上下アクション、
頭上に籠を載せた右移動アクション、
を再制作した。
結果として、パンタも他の4キャラクターと同じ世界観、同じ制作方法の中へ統一することができた。
そして何より、
以前よりパンタらしく、かわいく、動きの大きな素材が得られた。
作り直したことによって、4面図から始める今回の方法の有効性を、逆に確認することになった。
今回確立した制作工程
今回の実験から、ゲーム用キャラクターアクション素材について、次の制作工程が見えてきた。
キャラクター公式基準画像
↓
公式4面図を制作する
↓
4面図を新しいキャラクター基準資料とする
↓
動作の目的と最低限の条件だけを決める
↓
画像生成AIに複数の候補ポーズを自由に生成させる
↓
人間がゲームに使用するポーズを選択する
↓
必要なカットを個別のゲーム素材へ加工する
↓
Unity上で連続表示する
↓
移動・速度・上下動・ジャンプなどをUnity側で制御する
この工程では、
画像生成AIにアニメーションを完成させることを要求していない。
AIには、
魅力的な「動きの断片」を発見する役割
を与えている。
そして人間は、その中から何を使うかを判断する。
Unityは、それらを時間と空間の中で動かす。
人間とAIとUnityの役割が見えてきた
今回の実験を整理すると、それぞれの役割はかなり明確である。
人間
ゲームの目的を決める。
キャラクターを決める。
守るべき条件を決める。
生成された候補から採用するものを判断する。
対話AI
人間との対話から制作条件を整理する。
画像生成AIへ渡すプロンプトを設計する。
生成結果を分析し、次の制作方針を組み立てる。
画像生成AI
キャラクター基準資料をもとに、多様なアクションポーズを創作する。
人間が想定していなかった動きも提案する。
Unity
選択された素材をゲーム内へ配置する。
画像を切り替える。
キャラクターを移動させる。
速度、上下動、ジャンプなどを制御する。
これは単純な、
「AIにゲーム素材を作ってもらう」
という関係ではない。
人間、対話AI、画像生成AI、ゲームエンジンが、それぞれ得意な仕事を担当する制作工程になっている。
AIに任せることで生まれたもの
今回、何度も感じたことがある。
細かく指示したときより、
ある程度AIに任せたときの方が、魅力的なものが出てくることがある。
もちろん、すべてをAIに任せればよいという意味ではない。
キャラクターデザイン、装備、籠の位置、どんぐりの数など、守らなければならない条件は明確に指定する必要がある。
しかし、その条件の内側に、
AIが自由に考える余地
を残しておく。
するとAIは、単なる作業装置ではなく、
制作上の選択肢を増やす存在
になる。
人間が一つのポーズを考えてAIに描かせるのであれば、最初から存在している選択肢は一つしかない。
しかしAIに10種類のポーズを考えさせれば、人間はその10種類を見てから考えることができる。
その中には、人間が思いつかなかった11番目のアイデアへつながるものさえあるかもしれない。
今回のアクション素材制作で得られた最大の収穫は、完成した画像だけではない。
AIに何を指示するかだけではなく、何を指示しないかも、AI時代の制作では重要である。
そのことが、実制作を通して見えてきた。
