702講義室
2026-06-29 08:32:00
プライミング実験
人は気付かないうちに行動が変わる?
~ジョン・バーグのプライミング実験~
私たちは普段、「自分の意思で行動している」と考えています。
しかし、もし自分でも気付かないうちに、見たり聞いたりした情報が行動に影響しているとしたら、どうでしょうか。
この疑問に挑んだのが、1996年にアメリカの心理学者ジョン・バーグが行った「プライミング実験」です。
高齢者を連想する言葉を見てもらう
実験では、参加者に「5つの単語から4つを選んで文章を作る」という簡単な課題が与えられました。
その中には、
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白髪
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しわ
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物忘れ
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ビンゴ
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フロリダ
など、高齢者を連想させる言葉が含まれていました。
ただし、「ゆっくり」や「遅い」といった言葉は使われていません。
参加者は、あくまでも文章を作る課題だと思っており、この単語に特別な意味があるとは気付いていませんでした。
実は本当の実験はその後でした
課題が終わると、参加者は部屋を出て廊下を歩いて帰ります。
実は研究者が本当に調べたかったのは、このときの歩く速さでした。
参加者には知らせず、廊下を歩く速度を測定していたのです。
驚きの結果
高齢者を連想する言葉を見ていたグループは、そうでないグループよりも歩く速度が少し遅くなったと報告されました。
参加者自身は、自分の歩き方が変わっていることに全く気付いていませんでした。
つまり、意識して読んだわけではない「言葉のイメージ」が、その後の行動に影響を与えた可能性が示されたのです。
この実験が伝えたかったこと
この研究は、「人は気付かないうちに周囲の情報から影響を受けているかもしれない」という考え方を広めるきっかけとなりました。
私たちは毎日、たくさんの言葉や映像、音楽に囲まれて生活しています。
そのすべてを意識しているわけではありませんが、無意識のうちに気分や判断、行動へ影響を受けている可能性は十分に考えられます。
その後の評価
一方で、この実験は後年、同じ方法で試しても同じ結果が得られなかったという報告もありました。
そのため現在の心理学では、「この実験だけで無意識が人の行動を大きく変えると証明された」とは考えられていません。
しかし、人が意識していない情報が、判断や感情、行動にある程度の影響を与える可能性については、現在もさまざまな研究が続けられています。
サブリミナル効果との関係
この実験は、厳密にはサブリミナル実験ではありません。
参加者は単語を見ることができていましたが、その言葉が自分の行動に影響しているとは気付いていませんでした。
つまり、「見えてはいるけれど意識されない情報」が、人の行動にどのような影響を与えるのかを調べた実験だったのです。
このことから、サブリミナル効果を考える上でも、「無意識の働き」を理解するための重要な研究の一つとして、現在でもたびたび紹介されています。

