AIゲーム開発研究室

2026-08-12 16:23:00

第26回 ゲーム用背景画像を設計する

AIゲーム開発ドキュメント

第26回

ゲーム用背景画像を設計する


はじめに

前回までに、パンタの基本的なキャラクターアクション素材を制作した。

左右へ小さく跳ねながら移動するキャッチアクション。

そして、その場で上下に小さく跳ねながらどんぐりを待つ、待機キャッチアクション。

画像生成AIによって原画を制作し、人間が画像を選定・加工し、ゲームで使用するシーケンスファイルへ仕上げる。

ここまでの実験によって、現時点の画像生成AIを利用したキャラクターアクション素材制作に、一つの実用的な方法が見えてきた。

次に制作するのは、

キャラクターが実際に動く世界――ゲームの背景である。

しかし、背景も単に画像生成AIへ「森を描いてください」と指示すればよいわけではない。

絵本の背景と、ゲームの背景では役割が違う。

そこで今回は、いきなり背景画像を生成するのではなく、

「森のどんぐり大作戦」のゲーム画面として、背景をどのように構成するのか。

人間と対話AIによる設計会議から始める。


人間と対話AIによる背景設計会議

研究代表

パンタのアクション素材が完成したので、次は背景画像を作りたいと思います。

舞台は「どんぐりの森」です。

絵本で制作した森のような、木々に囲まれた美しい森を背景にしたいと思います。


主任研究員 Arc

ここで最初に一つ決めておきたいことがあります。

今回は「きれいな森の絵」を作ることから始めるのではなく、

ゲームが成立する森を設計する

ところから始めた方がよいと思います。

絵本の背景とゲームの背景では、同じ森でも役割が違います。


研究代表

ゲームでは、画面の上からどんぐりがランダムに落ちてきます。

パンタは画面下部を左右へ小さくジャンプしながら移動して、籠でどんぐりを受け止めます。

パンタの移動する一番下の部分に、背景とは別に細長い草地を置いたらどうでしょう。

草地を最前面にして、

背景の森、

パンタ、

草地、

という順番です。


主任研究員 Arc

それは有効だと思います。

背景の地面には木の根や草、岩などが描かれる可能性があります。

そこをパンタがそのまま移動すると、背景の岩を通り抜けたり、地面との接地が不自然に見えたりする可能性があります。

パンタより手前に草地を配置すれば、足元を自然に隠すことができます。

つまり、この草地は装飾ではなく、

背景とプレイヤーキャラクターの視覚的な不整合を吸収する前景パーツ

になります。


研究代表

上にも別パーツを置きたいです。

画面上部から木の枝葉が、屋根の軒のように少しかぶさっている。

少しシルエット的な枝葉にして、その上にUIを表示します。

どんぐりは、その枝葉の奥から落ちてくるようにしたいです。


主任研究員 Arc

そうすると画面は三つの美術レイヤーに分けられます。

最背面に森。

上部前景に枝葉。

下部前景に草地。

そして、その間にゲーム中のパンタと落下するどんぐりを配置する。

一枚の背景画像ですべてを表現する必要がなくなります。


研究代表

UIには何を表示するのか、どんなデザインにするのか、まだ決めていません。

でも枝葉が別パーツなら、UIが増えても対応できますね。


主任研究員 Arc

はい。

枝葉パーツを作り直す必要もありません。

Unity上で枝葉パーツを上下に移動させれば、UI表示領域を広げたり狭めたりできます。

つまり上部の枝葉は、

UI領域を後から調整できる可動前景

として機能します。


研究代表

それならゲーム画面の比率にも、かなり融通が利きそうですね。

背景は森の中だけですから、上下が多少切れても問題ありません。


主任研究員 Arc

その考え方でよいと思います。

背景の上下左右に、必ず画面内へ入れなければならない重要な建物や地形を配置しなければ、多少トリミングされても森として成立します。

したがって背景は、

画面端が多少切れても自然に見える構図

として制作します。

ゲーム画面の上下については、上部枝葉と下部草地という独立パーツによって調整できます。


研究代表

背景の森には、どんぐりは描かない方がいいですね。


主任研究員 Arc

これは重要です。

ゲーム中に落下するどんぐりは、プレイヤーがキャッチするゲームオブジェクトです。

背景にもどんぐりが描かれていると、

ゲームとして意味を持つどんぐりと、単なる背景のどんぐりが混在してしまいます。

ですから背景には、木になっているどんぐりも、地面に落ちているどんぐりも描かないことにしましょう。


研究代表

絵本を作ったときに素晴らしい森の絵ができたので、川や岩なども入れたくなったのですが(笑)。


主任研究員 Arc

気持ちは分かります(笑)。

ただ今回は、ゲームを優先した方がよいと思います。

川、橋、小屋、大きな岩などを入れると、背景としては豊かになりますが、ゲーム空間としての意味も発生します。

今回は、

「深いどんぐりの森の中」

というシンプルな舞台にする。

その代わり、大きなクヌギやナラ、遠くへ続く木々、草花、シダ、木漏れ日などによって、豊かな森を表現する。

ゲームを邪魔しない豊かな森

を目指します。


研究代表

パンタは正面を向いたまま左右へ移動するアクションなので、今回は背景固定でいいと思います。

ほかのキャラクターや別のゲームで背景スクロールを使う可能性はありますが、それは保留にします。


主任研究員 Arc

賛成です。

今回の背景制作実験では固定背景とします。

スクロールまで同時に検討すると、背景制作だけでなくキャラクター移動やカメラ制御まで検証対象が広がります。

まず固定背景で一つのゲームを成立させる。

スクロール背景については、必要になった時点で別途検討しましょう。


森のどんぐり大作戦

背景・画面構成仕様 Ver.1.0

今回の会議をもとに、背景制作仕様を次のように決定する。


基本方針

ゲーム画面全体を、

「どんぐりの森」の中

として表現する。

ただし、絵本のように一枚の絵ですべてを表現するのではなく、

背景と前景パーツを分離したレイヤー構造

によってゲーム画面を構成する。


背景レイヤー

最背面には、固定された森の背景画像を配置する。

背景には、

大きなクヌギやナラ、
森の奥へ続く木々、
草花、
シダなどの下草、
木漏れ日、

などを描き、豊かな森の奥行きを表現する。

ただし、ゲームプレイを妨げるような強い構造物は原則として配置しない。

川、橋、小屋、大きな岩などは今回は使用しない。

また、

背景にはどんぐりを一切描かない。

木になっているどんぐり、地面に落ちているどんぐりの双方を描かない。

ゲーム中に出現するどんぐりだけが、プレイヤーにとって意味を持つ対象となるようにする。

背景にはキャラクターも描かない。


下部前景レイヤー

画面下部には、背景とは独立した横長の草地パーツを配置する。

パンタは、

背景画像と草地パーツの間

に配置する。

これにより、パンタの足元を草によって自然に隠し、背景の地面に描かれた細かな形状との視覚的な不整合を軽減する。

草地はパンタより手前に表示する。


上部前景レイヤー

画面上部には、背景とは独立した横長の枝葉パーツを配置する。

枝葉は画面上から森の枝が張り出しているような形とし、ややシルエット的な表現とする。

この枝葉の上にUIを表示する。

枝葉パーツはUnity上で上下位置を変更できるようにし、

UI表示領域を調整するための可動前景

として使用する。

UIの内容やデザインが後から変更・追加された場合も、上部枝葉パーツを上下に移動させることで表示領域を拡大・縮小し、背景画像や枝葉パーツそのものを作り直さずに対応できる構造とする。


どんぐりの表示レイヤー

ゲーム中のどんぐりは画面上部からランダムに落下する。

表示上は、

背景画像より手前、上部枝葉より奥

に配置する。

これにより、どんぐりが枝葉の奥から森の中へ落ちてきたように見せる。

背景画像にはどんぐりを描かないため、落下するどんぐりだけが明確なゲームオブジェクトとして認識できる。


プレイヤーレイヤー

パンタは画面下部を左右へ移動する。

パンタの表示位置は、

背景画像より手前、下部草地より奥

とする。

前回までに制作した小ジャンプ移動アクションと、その場ジャンプによる待機キャッチアクションを使用する。


背景の構図

背景画像は、上下左右が多少トリミングされても森として自然に成立する構図とする。

画面端に、

建物、
橋、
川、
特徴的な巨大岩、

など、欠けると構図が破綻する重要物を配置しない。

背景画像そのものにゲーム画面全体の調整機能を持たせるのではなく、

上部枝葉と下部草地を独立させることによって、Unity上で画面構成を調整する。


カメラ

今回のゲームでは背景を固定する。

パンタは固定された森の中を左右へ移動する。

背景スクロールについては、今後ほかのキャラクターや別ゲームで採用する可能性を残すが、今回の背景制作では扱わない。


画面のレイヤー構造

最終的な表示順は、奥から手前へ、

森の背景

落下するどんぐり

パンタ

上部枝葉・下部草地

UI

を基本とする。

ただし、上部と下部は画面上で離れているため、それぞれ独立した前景パーツとして管理する。


今回の背景制作で最も重要な考え方

今回の検討によって、背景画像そのものを美しく作ることだけが目的ではないことが明確になった。

絵本では、

一枚の絵として完成された世界

を作る。

ゲームでは、

キャラクターやゲームオブジェクトがその中で機能できる世界

を作る。

そのため今回は、

森の背景、上部枝葉、下部草地を分離する。

変更される可能性のあるUI領域は、背景画像へ描き込まない。

ゲームとして意味を持つどんぐりも、背景へ描き込まない。

キャラクターの移動に影響する強い地形も、必要がなければ描かない。

つまり、

ゲーム背景では、何を描くかだけでなく、何を描かないかを設計する。

これを今回の背景制作における基本方針とする。


次回

今回、人間と対話AIによる設計会議によって、

「森のどんぐり大作戦 背景・画面構成仕様 Ver.1.0」

が完成した。

次回は、この仕様をもとに、実際に画像生成AIへ渡すためのプロンプトを作成する。

そして、

ゲーム用として設計した背景を、画像生成AIはどこまで意図どおりに制作できるのか。

 

実際の背景画像制作へ進む。