AIゲーム開発研究室
第27回 ゲーム背景の実制作 ― AI生成素材を一つのゲーム世界へ統合する
AIゲーム開発ドキュメント
第27回 ゲーム背景の実制作
― AI生成素材を一つのゲーム世界へ統合する ―
前回までの検討によって、ゲーム「森のどんぐり大作戦」に必要となるキャラクター素材の制作方法について、一定の方針を定めることができました。
今回は、実際にゲームで使用する背景の制作を行います。
今回の目的は、単に生成AIに「ゲーム背景を一枚描いてもらう」ことではありません。
まず背景となる一枚の画像を制作し、さらにその手前に配置する枝葉や草地を独立した素材として制作します。
そして、それらを人間が加工・配置・色調補正し、一つのゲーム画面として統合していきます。
1.まず背景画像を制作する
最初に、ゲームの舞台となる「どんぐりの森」の背景画像を画像生成AIで制作しました。
完成した背景画像は、
1536×1024px
でした。
この画像は3:2の比率であり、一般的な16:9のゲーム画面とは比率が異なります。
しかし今回は、この背景画像を16:9へ変形したり、トリミングして新しい画像を作ったりすることはしません。
生成された1536×1024pxの背景原画を、そのままゲーム素材として使用することにしました。
必要があれば色調補正は行いますが、画像そのもののサイズは変更しません。
2.背景だけではなく、前景を別素材として制作する
背景画像をゲーム画面として検討していくと、一枚の背景画像だけで画面を完成させるのではなく、その手前に別の植物を配置した方が、森の奥行きを表現できると考えました。
そこで、
画面上部の枝葉
と、
画面下部の草地
を、背景とは別の透明PNG素材として画像生成AIに制作させました。
上部の枝葉は、画面の手前に木々が存在していることを感じさせます。
下部の草地は、キャラクターのさらに手前に植物を配置することで、キャラクターが森の中に存在している感覚を作ります。
さらに下部には、短い草が密集した「草の地面ベース」も制作しました。
これによって、
背景
+ 上部の枝葉
+ 下部の草地
+ 草の地面ベース
という複数レイヤーによって、ゲーム背景を構成することにしました。
3.生成された素材のサイズは揃っていなかった
画像生成AIによって制作された素材は、すべて同じ画像サイズではありませんでした。
背景画像は、
1536×1024px
です。
一方、前景として制作した枝葉や草地には、
幅2048px
のものと、
幅2172px
のものがありました。
そこで前景素材については、人間が加工を行い、
幅2048px
に統一しました。
ただし、背景画像については1536×1024pxの原画を維持しています。
つまり今回の制作では、
すべてのゲーム素材を同じピクセルサイズに統一したわけではありません。
4.16:9のゲーム画面を想定した作業ファイルを作る
次に、実際のゲーム画面を想定して、16:9で確認できる作業環境を作りました。
ここで重要なのは、
背景画像を16:9の画像へ作り直したわけではない
ということです。
作業画面は、幅2048pxに統一した上下の前景素材を基準として構成しました。
そこへ1536×1024pxの背景原画を配置します。
そのため16:9のシミュレーション画面では、背景画像全体が表示されるのではなく、背景原画の中央付近がゲーム画面として見えている状態になります。
これはゲーム用背景の最終サイズを決定するための作業ではありません。
あくまで、
「実際に16:9のゲーム画面として見た場合、どのように見えるのか」
を確認するためのシミュレーションです。
5.すべての素材をレイヤーとして一つのファイルにまとめる
背景、上部の枝葉、下部の草地などを、それぞれ独立したレイヤーとして一つの制作ファイルへまとめました。
ここでは画像を一枚に結合してしまうのではありません。
それぞれを独立したレイヤーとして保持します。
そして実際のゲーム画面を見ながら、
枝葉の位置、
草地の位置、
素材の重なり、
左右反転、
不要部分の処理、
植物の密度
などを調整していきます。
この段階で重要なのは、個々の素材だけを見て完成させないことです。
最終的にプレイヤーが見るのは、一つ一つの素材ではありません。
すべてが重なったゲーム画面です。
そのため、
ゲーム画面全体を一枚の絵として見ながら、各素材を調整しました。
6.人間が色調補正を行う
今回、背景、枝葉、草地は、それぞれ別々に画像生成AIによって制作されています。
同じ水彩絵本風の画風を指定していても、それだけですべての素材の色彩が完全に統一されるわけではありません。
そこで人間が、
明度、
彩度、
色相、
コントラスト
などを調整しました。
しかも、それぞれの素材を単独で見ながら補正するのではありません。
背景、枝葉、草地を重ねた状態を見ながら、
一つの絵として自然に見えるように色調を合わせていきます。
今回、別々に生成された背景、枝葉、草地が一つの森として見えるようになったのは、画像生成AIが最初から完全に同じ色彩で素材を生成したからではありません。
人間による画像加工と色調補正によって、一つの世界として統合した結果です。
この工程は、AIによるゲーム素材制作において重要な人間側の作業になると考えられます。
7.まず「一枚の絵」として完成させる
加工と色調補正を繰り返しながら、16:9のゲーム画面として全体を確認します。
ここでは、Unityへ持ち込むための個別素材を完成させることを先に考えるのではなく、
まずゲーム画面そのものを一枚の絵として完成させる
ことを優先しました。
上部には手前の枝葉があります。
中央には明るい森が広がっています。
下部には豊かな草地があります。
この前景と背景の重なりによって、単なる森の背景ではなく、
「森の中でゲームをしている」
と感じられる画面を作っていきました。
8.パンタを原寸のまま配置して確認する
背景画面が完成したところで、実際のキャラクターであるパンタを配置してみました。
ここでも、パンタの画像サイズは変更していません。
制作済みのパンタを原寸のまま仮配置しています。
そのため、現在のシミュレーション画面では、パンタが少し小さく見える可能性があります。
しかし、この段階では問題ありません。
今回確認したいのは、
背景の中でパンタを認識できるか、
草地との重なりが自然に見えるか、
キャラクターが森の中に存在しているように見えるか、
といった視覚的な問題です。
実際のゲームにおけるパンタの表示サイズや位置は、Unityへ実装した後に調整します。
したがって、このシミュレーション画像だけを基準としてパンタの原画を拡大・縮小することはしません。
9.落下するどんぐりも配置する
次に、ゲーム中に上から落下するどんぐりの素材を画像生成AIで制作しました。
どんぐりは単なる背景の装飾ではありません。
プレイヤーがパンタを操作し、
追いかけ、
籠でキャッチする、
ゲーム上の重要な対象物です。
そのため、どんぐりには背景の中でも十分に認識できる視認性が必要になります。
実際にパンタと一緒に配置し、両者の見え方を確認しました。
ここでいうパンタとどんぐりの比率は、現実世界における物理的な縮尺を意味するものではありません。
パンタの籠の中に描かれているどんぐりと、落下するどんぐりの大きさを一致させる必要もありません。
重要なのは、
プレイヤーがパンタを操作しながら、落下するどんぐりを瞬時に認識し、追いかけることができること
です。
そこで、ゲームオブジェクトとして十分な存在感と視認性を持つことを基準として、パンタとの相対的な大きさを検討しました。
実際のゲームでは、どんぐりは回転しながら落下する予定です。
最終的な表示サイズや回転速度については、Unity上で実際に動かしながら調整します。
10.完成後、再びパーツへ分離する
16:9のゲーム画面として背景が完成しても、この一枚の画像をそのままゲーム背景として使用するわけではありません。
制作時には一つのファイルへ集めた、
背景、
上部枝葉、
下部草地、
その他の前景素材
を、完成後に再びそれぞれのゲーム素材としてエクスポートします。
つまり今回の制作では、
AIによる個別素材の生成
↓
人間による一つの制作ファイルへの統合
↓
加工・配置・色調補正
↓
ゲーム画面として完成
↓
再びパーツごとに分離してエクスポート
という工程を行いました。
そして、それぞれの素材をUnityへ持ち込みます。
Unity上では、実際のゲーム画面を確認しながら、
表示サイズ、
位置、
キャラクターとの関係、
UIとの関係
などを最終的に調整します。
今回の実制作から分かったこと
今回の背景制作では、画像生成AIに一枚の完成背景を制作させ、それをそのままゲームへ使用する方法は採用しませんでした。
背景、枝葉、草地などを独立した素材として生成し、それらを人間が一つの制作ファイルへ集めました。
そしてゲーム画面全体を見ながら加工し、色調を補正することで、一つの世界として統合しました。
完成後には、再びゲーム実装用の独立した素材へ分離します。
ここから分かるのは、
AIが生成した個々の画像素材と、実際にゲームで使用できる完成素材は、必ずしも同じものではない
ということです。
今回の制作では、
AIが素材を生成する。
人間が素材を加工する。
人間が色調を統一する。
人間がゲーム画面として構成する。
Unity上で最終的な表示サイズと位置を調整する。
という役割分担になりました。
また、背景1536×1024px、前景幅2048px、キャラクターなど、元となる画像素材のピクセルサイズがすべて統一されている必要もありませんでした。
重要なのは、素材の数値を機械的に揃えることではなく、
最終的なゲーム画面の中で、それぞれが適切な大きさ、位置、色彩、役割を持つように調整すること
です。
そして今回、もう一つ重要だったのが、
ゲーム背景を「素材の集合」としてだけではなく、最終的には一枚の絵として判断すること
でした。
「森のどんぐり大作戦」は、絵本「おむすび山」の世界の中で遊ぶゲームです。
ゲームとして機能することだけではなく、
絵本の世界そのものの中でキャラクターを動かしているように感じられること。
そのためには、AIによる素材生成だけでなく、人間による加工、色調補正、構図の判断が必要でした。
今回の実制作によって、
AIによる個別素材の生成と、人間による視覚世界の統合。
その両方を組み合わせることで、AI生成画像を実際のゲーム背景へと変えていく、一つの制作方法が見えてきました。











