AIゲーム開発研究室

2026-10-05 23:58:00

第17回 高精細AIモデルをゲーム用モデルへ軽量化する

AIゲーム開発研究室

3Dモデル制作ドキュメント


第17回 高精細AIモデルをゲーム用モデルへ軽量化する

― HDモデルからQuadリトポロジー、Triangle化までの検証 ―


研究代表 大川 博
主任研究員 Arc(ChatGPT)


はじめに

前回までの検証によって、リンのTポーズ4面図に含まれていた情報の不整合を修正し、Tripoによる3Dモデル生成で採用可能なHDモデルを完成させることができた。

今回の課題は、この高精細モデルを実際のゲーム制作で使用できるモデルへ軽量化することである。

完成したリンのHDモデルは、

1,916,616 faces
1,007,466 vertices

という非常に高精細なモデルである。

しかし、ゲームで使用するためには、このままではポリゴン数が多すぎる。

そこで今回は、Tripoのリトポロジー機能を使用して、HDモデルからポリゴン数を大幅に削減したモデルを生成し、

どこまで外観品質を維持できるのか

さらに、

ゲーム用モデルを制作する場合、どのようなメッシュ構造で軽量化するのが適切なのか

を検証することにした。


1.約191万facesのHDモデルから軽量化する

今回の出発点は、前回完成したリンのHDモデルである。

【画像1 完成したリンのHDモデル】

1,916,616 faces
1,007,466 vertices

今回の方法では、最初から低ポリゴンモデルを生成するのではない。

まずAIによって可能な限り高品質なモデルを生成し、その完成した形状を基準として、後工程でゲーム用モデルへ軽量化する。

今回検証する基本工程は、

高精細HDモデルを生成

↓

Quadでリトポロジー

↓

Blenderでモデルを確認・調整

↓

最終的にTriangleへ変換

↓

ゲームへ実装

という流れである。

これは、これまでパンタの制作でも検証してきた、

「まず高品質なモデルを作り、その後ゲーム用途に合わせて大幅に軽量化する」

という制作方法を、リンでも改めて検証するものである。


2.Quad約10,000を指定してリトポロジーする

まず、HDモデルを基準として、TripoでQuadによるリトポロジーを行った。

約10,000ポリゴンを目標として生成した結果、完成したモデルは、

Quad 10,792

となった。

【画像2 Quad 10,792モデル・テクスチャ表示】

【画像3 Quad 10,792モデル・Blenderワイヤーフレーム】

元のHDモデルは約191万facesである。

そこから約1万Quadまで大幅に削減したにもかかわらず、テクスチャを表示した状態では、リンの顔、身体、大きなしっぽ、バッグなどの外観はかなり維持されている。

Blenderでメッシュを確認すると、ポリゴン数が大幅に削減されていることも明確に確認できた。


3.指定したポリゴン数と生成結果は一致するとは限らない

ここで、以前行ったパンタのリトポロジー実験との違いに気づいた。

パンタでは、Tripoで約10,000ポリゴンを指定したにもかかわらず、実際に生成されたモデルは約14,000ポリゴンとなった。

今回のリンでも同様に約10,000を指定したが、生成結果は10,000弱となったケースも確認している。

つまり、同じ「10,000」という指定であっても、実際に生成されるポリゴン数は同じではない。

今回までの実験から、Tripoで指定するポリゴン数は、

完成モデルのポリゴン数を厳密に固定する値ではなく、リトポロジーを行う際の目標値

として考える必要があることが分かった。

パンタとリンで結果が異なる理由については、元モデルの形状や構造などが関係している可能性も考えられるが、今回の実験だけでは判断できない。


4.さらにQuad 5,000を指定する

Quad約10,000まで軽量化しても外観がかなり維持されたため、さらにポリゴン数を減らすことにした。

ここで重要なのは、

Quad 10,792
↓
Quad 5,550

と段階的に削減したのではないことである。

Quad 10,792とQuad 5,550は、どちらも元のHDモデルから直接リトポロジーしている。

つまり、

HD 1,916,616 faces
↓
Quad 10,792

と、

HD 1,916,616 faces
↓
Quad 5,550

という二つのモデルを生成して比較した。

TripoでQuad 5,000を指定した結果、

5,550 faces
4,938 vertices

となった。

【画像4 Tripoで生成したQuad 5,550モデル】

【画像5 Quad 5,550モデル・Blenderワイヤーフレーム】

Quad 10,792と比較すると、faces数はほぼ半分になっている。

しかし、テクスチャを表示した状態で比較したところ、今回の目視確認では、両者の外観品質に大きな差は確認できなかった。

もちろん、これだけでQuad 5,550が最適なポリゴン数であるとは判断できない。

しかし少なくとも今回のリンでは、約191万facesのHDモデルを5,550 Quadまで軽量化しても、キャラクターの外観をかなり維持できることが確認できた。


5.HDモデルから直接Triangleへ軽量化する

次に比較のため、HDモデルから直接Triangleによるリトポロジーも行った。

その結果、

Triangle 9,740

のモデルが生成された。

Blenderで確認すると、

4,869 vertices
9,740 faces
9,740 triangles

となっていた。

【画像6 Triangle 9,740モデル・テクスチャ表示】

【画像7 Triangle 9,740モデル・Blenderワイヤーフレーム】

テクスチャを表示した状態では、このモデルもリンの外観をかなり維持している。

しかし、ワイヤーフレームを確認すると、Quadモデルとは明らかな違いがあった。


6.QuadとTriangleではメッシュの構造が異なる

ここが今回の検証で、モデリング上特に重要な部分である。

HDモデルから直接Triangleへ削減したモデルでは、モデル表面が多数の三角面によって構成されている。

そのため、エッジの方向が細かく分散している。

一方、Quad 5,550モデルでは四角面を基本として構成され、顔、胴体、腕、脚、しっぽなど、キャラクターの形状に沿った比較的連続したエッジの流れを見ることができる。

【画像8 Quad 5,550とTriangle 9,740のワイヤーフレーム比較】

これは単に、

QuadかTriangleか

という形式上の違いではない。

3Dモデルは、リトポロジーした後にもBlenderで形状の確認や修正、調整を行う可能性がある。

そのため、制作途中のモデルでは、ポリゴン数だけではなく、

人間がメッシュ構造を把握し、編集・調整できる状態であること

も重要になる。


7.Quad 5,550をTriangleへ変換する

ただし、今回のQuad 5,550モデルを、そのままゲームへ持ち込むわけではない。

ゲームで使用する最終モデルではTriangleへ変換する。

そこで、Quad 5,550モデルをBlenderでTriangle化した。

その結果、

Quad 5,550
↓
Triangle 9,871

となった。

【画像9 Quad 5,550をBlenderでTriangle化した状態】

ここで興味深い結果が得られた。

HDモデルからTripoで直接Triangleへリトポロジーしたモデルは、

9,740 triangles

である。

一方、

Quad 5,550からBlenderでTriangle化したモデルは、

9,871 triangles

である。

その差は、わずか131 trianglesである。


8.最終ポリゴン数が近くても制作工程は同じではない

ゲームへ持ち込む段階だけを見れば、

直接Triangle化したモデル 9,740 triangles

と、

Quadを経由してTriangle化したモデル 9,871 triangles

は、ほぼ同じ規模のモデルである。

しかし、3Dモデルの制作工程として考えると、両者には大きな違いがある。

直接Triangleへリトポロジーする場合は、

HDモデル

↓

Triangle

↓

ゲーム実装

となる。

これに対して、Quadを経由する場合は、

HDモデル

↓

Quadリトポロジー

↓

Blenderで確認・編集・調整

↓

Triangle化

↓

ゲーム実装

となる。

最終的にはどちらも約1万Triangleである。

しかしQuadを経由することで、その途中に、

キャラクターの形状に沿ったエッジの流れを持つ、モデリング作業に適したメッシュ

を確保することができる。

したがって、

「ゲームでは最終的にTriangleを使用するのだから、最初からTriangleへ削減すればよい」

とは限らない。

最終的なポリゴン数だけではなく、制作途中で人間がモデルを扱えるメッシュ構造を確保することも、ゲーム用3Dモデル制作では重要である。


9.AI時代のゲーム用3Dモデル制作工程

今回の検証によって、これまでパンタの制作から考えてきたAI時代のモデリング工程が、さらに具体的になってきた。

従来は、ゲーム用モデルではポリゴン数を抑えながらモデルを制作することが重要だった。

しかしAIによる高精細3Dモデル生成とリトポロジーを組み合わせることで、別の制作方法が可能になりつつある。

今回検証した工程は、

AIで最高品質のHDモデルを生成する

↓

AIでQuadリトポロジーする

↓

Blenderで人間がメッシュを確認し、必要な修正・調整を行う

↓

最終段階でTriangle化する

↓

ゲームへ実装する

というものである。

今回のリンでは、

HD 1,916,616 faces

から、

Quad 5,550 faces

まで大幅に軽量化した。

そしてゲーム用としてTriangle化すると、

9,871 triangles

となった。

それでも今回の目視比較では、HDモデルから受け継いだリンの外観に大幅な品質低下は確認されなかった。

これは、以前パンタで確認した、

「最初から低ポリゴンで作るのではなく、まず高品質なモデルを生成し、その後大幅に軽量化する」

という方法を、別のキャラクターであるリンでも改めて検証した結果である。


10.今回の検証から分かったこと

今回の実験から、まず、AIによって生成した約191万facesの高精細モデルを、5,550 Quadまで大幅に軽量化しても、今回の目視比較では外観をかなり維持できることが確認できた。

また、Tripoで指定するポリゴン数は必ずしも完成時の数値と一致せず、パンタとリンでは同じ約10,000という指定でも異なる結果となった。

さらに、

Quad 5,550 → Triangle 9,871

と、

HD → 直接Triangle 9,740

では、最終的なTriangle数はほぼ同じになった。

しかし、その制作工程には重要な違いがある。

直接Triangleへ削減したモデルでは、最初から三角面によるメッシュとなる。

一方、Quadリトポロジーを経由すれば、ゲーム用Triangleへ変換する前に、形状に沿ったエッジの流れを持つメッシュをBlender上で扱うことができる。

今回の実験で重要だったのは、単に、

「どこまでポリゴン数を減らせるか」

ということだけではない。

「AIが生成した高精細モデルを、どのような工程でゲーム用モデルへ変換するのか」

という制作方法そのものが見えてきたことである。


次回へ

軽量化したリンのモデルが完成した。

次の課題は、このモデルを実際にゲームキャラクターとして動かすことである。

そこで、Mixamoによる自動リギングを行った。

しかし――

ここで、新たな問題が発生した。

次回は、リンのようなデフォルメされたキャラクターにMixamoで自動リギングを行ったとき、何が起きるのかを検証する。


第17回 完