AIゲーム開発研究室

2026-10-16 04:57:00

番外編 第3弾 ゴミ屋敷ゲーム ― ゲームを生み出す対話から、対話そのものを研究する対話へ ―

AIゲーム開発研究室
AIとの対話だけでどこまでできるか
制作ドキュメント

番外編 第3弾
ゴミ屋敷ゲーム
― ゲームを生み出す対話から、対話そのものを研究する対話へ ―

研究代表 大川 博

主任研究員 Arc(ChatGPT)

ゴミ屋敷ゲーム紹介用イメージ
図1 ゴミ屋敷ゲームの紹介用イメージ画像(画像生成AIによる制作)
はじめに 一本の言葉から始まった実験

今回の実験の出発点は、一冊の書籍にあった。『つくりながら学ぶ!Codexではじめる AI駆動ゲーム開発実践ガイド』の冒頭に、AIとゲームを作るうえでは「アイデアの伝え方」が重要である、という趣旨の記述があった。

その言葉をきっかけに、研究代表は、あらかじめ詳細な仕様書を作らず、思いついたことをアーク主任(ChatGPT)に伝えながら、ブラウザゲームを制作することにした。書籍の方法を再現するのではなく、これまで使ってきた対話型AIで、実際にどこまでできるのかを試す実験である。

本稿は、ゲームの機能を解説する記事ではない。人間が何を伝え、AIがどう受け止め、何が伝わらず、どのように伝え直されたかを追う記録である。ゲームの内容は、そのやり取りによって生じた結果として登場する。

そして第3弾には、もう一つの特徴がある。ゲーム完成後、制作ドキュメントについて交わされた会話が、研究の意味をさらに変えていった。その過程も、今回の記録に含める。

※会話の引用は、確認できる発言を使用した。制作中のすべての発言を再録したものではなく、原文を確認できない箇所は会話として創作せず、経過の説明として記した。

第一部 ゲームを生み出す対話
第1章 言葉は、どのようにゲームになるのか
1-1 完成した仕様書ではなく、思いついたアイデア

舞台はゴミ屋敷。室内へ次々に飛んでくるゴミを主婦が箒で迎撃する。取り逃したゴミは積み重なり、最後には主婦が押し出される。これがゲームの出発点となった。

ここで試したかったのは、仕様を漏れなく伝えることではない。人間の頭の中にあるイメージを、日常の言葉で伝えることだった。

初期の制作記録には、主婦の姿についての短い指示も残っている。

研究代表

かわいい主婦

このような短い言葉から、AIは姿や動きの具体案を補って実装する。そこに対話型制作の手軽さがある一方、人間の意図とAIの補完が一致するとは限らないという問題も生まれる。

【画像挿入②】最初期のゲーム画面(Ver.0.1付近)
図2 最初の言葉を受けてAIが制作したゲーム画面。完成版との比較資料。
1-2 答え合わせは、実際に遊ぶこと

AIがHTMLを制作し、研究代表がブラウザで遊ぶ。動作を見て初めて、「伝えたつもりだったこと」と「実際に作られたこと」の違いが見えてくる。

この実験では、コードを人間が書き直すのではなく、気づいたことを再び言葉で伝えることを基本とした。試遊は単なる動作確認ではなく、次の会話を生むきっかけになった。

第2章 伝えたことと、伝わったこと
2-1 「押し出される」は伝わっていたのか

ゴミが室内に積み重なっても、主婦が押し出されない。これは、当初のアイデアに関わる重要な食い違いだった。

研究代表

少しゲームで遊んでみました。それで気が付いたのは、本来の溢れるゴミに主婦が押し出されるというゲームオーバーにならない。ということです。

人間にとって「ゴミに押し出される」は自然な表現である。しかし、ゲームの中では、ゴミと主婦の接触、押す方向、移動量、庭への落下など、複数の動作が組み合わさる。

AIは修正を重ねたが、押し出しの力だけを変えれば解決するというものではなかった。研究代表は、修正されたゲームを再び遊び、意図した結果になっているかを確かめ続けた。

2-2 伝え直した結果が、画面に現れる

接触条件の調整に加え、主婦の初期位置も庭の近くへ移動した。やがて、ゴミに押されて主婦が落下する場面が確認された。

研究代表

何とか主婦が押し出され落下しました。

この一言には、修正の成否だけでなく、言葉で伝えた構想が実際の動きになったという確認が含まれている。

【画像挿入③】ゴミに押される主婦、または落下直前のゲーム画面
図3 「押し出される」という意図が実装されたことを示す場面。
第3章 会話によって、アイデアそのものが変わる
3-1 遊んでみると、次のアイデアが生まれる

ゲームを実際に遊ぶと、最初にはなかった要望が生まれた。ゴミの種類や大きさ、危険な大型ゴミ、得点の増減、ゲームオーバーの条件などである。

大型ゴミとの接触を即ゲームオーバーにする方式は、のちに減点方式へ変更された。一般ゴミの迎撃で加点し、大型ゴミへの接触で減点する仕組みは、試遊を重ねながら調整された。

ここで重要なのは、最終的な点数そのものではない。遊んだ結果を言葉にすることで、当初のアイデアが変化していったことである。

【画像挿入④】大型ゴミと得点表示が見える画面
図4 対話によるルール変更の結果。数値の詳細はゲーム画面の補足として示す。
3-2 言葉が、画面の印象も変えていく

建物の色を統一し、屋外には青空や山並み、木々、草花を描く。主婦を大きくかわいらしくし、箒を日本の座敷箒らしくする。こうした要望も、言葉によって伝えられた。

屋外のイメージを画像生成AIで示した後、ゲーム本体ではHTMLのCanvas描画で風景を制作した。イメージを共有する方法と、ゲームへ実装する方法は同じではない。

さらに、箒の見た目を改良すると、箒がゴミに当たって見えるのに迎撃できない問題が明らかになり、当たり判定の修正へと会話が進んだ。

【画像挿入⑤】屋外の風景を追加した後のゲーム画面
図5 言葉による景観の指定が反映されたゲーム画面。
【画像挿入⑥】改良された主婦と箒の拡大画面
図6 見た目の指示が、動作上の問題の発見にもつながった。
第4章 言葉で伝わらないとき、何を変えるか
4-1 「謎の腕」をめぐる行き違い

主婦の背中側に、腕のように見える不自然な肌色の突起が現れた。研究代表が言葉で指摘しても、AIは原因を正しく捉えられず、修正が続いた。

そこで研究代表は、問題箇所を丸で囲んだスクリーンショットを示した。

【画像挿入⑦】研究代表が問題箇所を丸で囲んだ実際のスクリーンショット
図7 言葉だけでは共有しきれなかった位置を、画像によって明示した。
4-2 画像で伝えると、解釈が変わった

画像で場所が明確になったことで、AIは腕ではなく、胴体の描画パーツが原因だと特定した。該当部分を削除すると、不自然な形は解消された。

【画像挿入⑧】修正後の主婦を同じ倍率で拡大した画面
図8 図7との比較によって、伝達方法の変更が生んだ結果を示す。

ここでの主題は、キャラクターの作画技術ではない。相手が誤解しているとき、同じ説明を繰り返すのではなく、伝達手段そのものを変えるという出来事である。

第5章 完成後にも、対話は続く

ゲームはVer.3.8で完成と判断された。しかし、前作のスマートフォン操作で生じた文字選択の問題が話題となり、Ver.3.9でタップ時の操作性を改善した。

研究代表はスマートフォンでの確認結果を、次のように伝えた。

研究代表

スマホでのゲームの確認をしました。バッチリです♪ なぜかスマホバージョンの方がビジュアルがいいのですが?????

この報告によって、スマートフォンでの操作性が確認された。一方、見た目がよく感じられる理由は検証されておらず、観察結果として残した。

さらに、ゲーム紹介用の画像も制作した。だが、ここで終わりではなかった。次に始まったのは、この実験をどのように記録するかという対話である。

【画像挿入⑨】スマートフォンでのVer.3.9実行画面
図9 スマートフォンでの表示と操作確認。
第二部 ゲームから研究が生まれる対話
第6章 ドキュメント制作で、同じ問題が再び起きた
6-1 会話が中心のはずだった

ゲーム完成後、アーク主任は制作ドキュメントの草稿を提示した。ところが、その内容はゲームの機能説明を中心にしたものだった。

研究代表

先ほどの確認でちょっと誤解していました。今回のドキュメントは会話を中心に進めるのではなかったのですか?

アーク主任

その通りです、研究代表。 今回のドキュメントは、実際の会話を中心に構成する予定でした。

AIは方針を理解したと答えた。しかし、その後の構成案でも、ゲームの機能ごとに章を分ける傾向が残った。

6-2 人間は、さらに意図を明確にする
研究代表

分かっているとは思いますが、今回のメインは会話、伝え方です。ゲームの機能は、どのように伝えたかの事例です。ゲーム自体の説明は、あくまでも事例であるということを踏まえて構成してください。

ここで、ゲームの機能は主題ではなく事例であることが、改めて明確になった。

このやり取りは、制作中に起きた「押し出される」という指示の行き違いと、構造が似ている。人間には明確な意図があっても、AIがそれを文章の構成へ正しく反映できるとは限らない。

つまり、ゲーム制作の対話を記録しようとする対話そのものにも、同じ研究課題が現れたのである。

第7章 ゲームの完成から、対話の研究へ
7-1 ゲームの内容は二の次
研究代表

これこそが、カテゴリー「AIとの対話だけでどこまでできるか」の本質に近いと思います。ゲームの内容は二の次ですね。

この発言によって、カテゴリーの位置づけがさらに明確になった。完成作品は実験の成果物である。しかし研究対象は、人間とAIが交わした対話、その理解と行き違い、そして発展の過程にある。

7-2 第3弾は、継続実験の一部
研究代表

そして、今回が第3弾。会話だけでどんどん制作されるゲームの品質が上がっていると思いますし、まだまだこれからレベルが上がっていくものと思われます。これはすごいことだと思います。

第1弾「モグラたたきゲーム」、第2弾「世界をちょっとだけ動かすゲーム」、第3弾「ゴミ屋敷ゲーム」。作品を重ねる中で、ゲームの構造や演出は複雑になり、完成度も高まっているように見える。

ただし、その理由をAIの能力向上だけに求めることはできない。人間の伝え方の変化や、双方の試行錯誤の蓄積も考えられる。これは今後の継続実験で確かめるべき課題である。

研究代表

第3弾は、単独のゲーム制作記録であると同時に、対話型ゲーム開発がどのように発展しているかを示す、継続実験の一部でもある。これこそが第3弾のメインテーマですね。第3弾のドキュメントには、「ゴミ屋敷ゲーム」をネタにした、今行われているアーク主任との会話こそが重要なテーマではないでしょうか?

ここで、ドキュメントの対象は、ゲーム制作中の会話から、完成後にゲームを題材として研究の意味を考える会話へと広がった。

第8章 書籍の一節から、独自の問いへ

最後に研究代表は、今回の実験が始まったきっかけを改めて語った。

研究代表

そもそもこの第3弾は、アーク主任に紹介された「つくりながら学ぶ!Codexではじめる AI駆動ゲーム開発実践ガイド 」の最初の部分に載っていた「AIとゲームを作るのに重要なことはアイデアの伝え方である」というようなことが書かれていたことから始まりました。もうすでにこの本を超えたような気がします(笑)。それでは、アーク主任に後は任せます。せいりしてください。

一冊の本の問題提起から始まった実験は、ゲームを制作するだけでは終わらなかった。ゲームの完成後にも対話が続き、その会話を通じて、研究の対象そのものが明確になっていった。

書籍の内容を超えたかどうかを比較評価することが、今回の目的ではない。重要なのは、一つの問いをきっかけに、独自の実験と新しい問いが生まれたという事実である。

おわりに 対話は、完成した後も続いている

第3弾「ゴミ屋敷ゲーム」は、会話だけでブラウザゲームを制作する実験として始まった。試遊を重ね、意図が伝わらなかった部分を伝え直し、ときには画像を使って問題を示しながら、完成へと進んだ。

しかし、本稿のもう一つの成果は、完成後の対話にある。ゲーム制作を記録しようとしたとき、AIはゲームの機能説明へと話を戻してしまった。研究代表はそのたびに、「会話こそが主題」であることを伝え直した。

そのやり取りを通じて、第3弾は単独のゲーム制作記録ではなく、人間とAIの対話がどのように発展していくかを追う、継続実験の一部として位置づけられた。

ゲームは、実験の舞台。完成作品は、その成果物。そして、人間とAIの対話そのものが研究対象である。

第4弾では何が生まれるのか。対話の方法はどう変わるのか。ゲームの品質はどこまで高まるのか。答えはまだわからない。だからこそ、実験を続け、会話と成果を記録していく。

【画像挿入⑩】完成したゴミ屋敷ゲーム Ver.3.9 の全画面
図10 第3弾の成果物。対話の結果として完成したブラウザゲーム。
ゴミ屋敷ゲームを遊んでみよう!

今回の対話から生まれた「ゴミ屋敷ゲーム」を、ぜひ実際に遊んでみてください。

パソコン・スマートフォンのブラウザで楽しめます。

【itch.io 公開ゲームへのリンクをここに設置】

※itch.ioの公開URLが決まったら、この部分を実際のリンクに差し替えてください。