702講義室
2026-07-03 08:52:00
カロリンスカ研究所の感情実験
危険は意識する前に感じている?
~カロリンスカ研究所の感情実験~
私たちは普段、「危険を見つけてから怖いと感じる」と考えています。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
スウェーデンのカロリンスカ研究所では、「人は危険を意識する前に、脳や身体が反応しているのではないか」という興味深い研究が行われました。
実験の内容
実験では、参加者に
- ヘビ
- クモ
など、多くの人が恐怖を感じやすい写真を、ごく短い時間だけ見せました。
写真はほんの一瞬だけ表示され、その直後に別の画像が表示されるため、参加者は何を見たのか分かりません。
実際に、
「何も見えませんでした。」
「何が映ったのか分かりません。」
と答える人がほとんどでした。
つまり、参加者は恐怖を感じる写真を見たという自覚がない状態でした。
ところが身体は反応していました
研究者は、写真を見ている間に、
- 心拍の変化
- 発汗
- 皮膚の電気反応
- 脳の活動
なども同時に測定していました。
すると、参加者は「何も見ていない」と答えているにもかかわらず、ヘビやクモの写真が表示されたときだけ、身体や脳に反応が現れたのです。
つまり、意識では気付いていなくても、脳は危険な情報を処理している可能性が示されました。
この実験が教えてくれたこと
この研究は、人間の脳には危険をすばやく察知する仕組みがある可能性を示しています。
もし危険を認識してから逃げていたら、野生では生き残ることが難しかったでしょう。
そのため、人間は長い進化の過程で、危険なものを意識するより先に察知する能力を身に付けたのではないかと考えられています。
もちろん、この仕組みについては現在も研究が続いており、どこまで無意識で処理されているのかについては、まだ多くの課題が残されています。
私の考察
ここからは私自身の考えになります。
私は、この研究は「本能に関わる情報ほど、潜在意識へ強く働きかける可能性」を示しているのではないかと考えています。
人間には、
- 危険を避けること
- 食べること
- 子孫を残すこと
- 眠ること
など、生きるために欠かせない本能があります。
こうした本能は、人類が長い進化の歴史の中で身に付けてきた、とても基本的な能力です。
一方で、文字を読んだり、社会のルールを学んだりする能力は、生まれた後に身に付けるものです。
このことを考えると、潜在意識は後天的に学習した情報よりも、生存に深く関わる本能的な情報を優先して処理している可能性があります。
もちろん、現時点では「本能が社会的価値観よりも常に強い影響力を持つ」と証明されているわけではありません。
しかし、危険を意識する前に身体が反応したというこの研究は、人間の潜在意識が、生きるために重要な情報を優先的に処理している可能性を考える上で、とても興味深い研究だと思います。
私が制作している「相転移する浮世絵」シリーズでも、人間の潜在意識がどのように視覚情報を受け取り、現実の認識へ影響していくのかを一つのテーマとしています。
この実験は、その可能性について改めて考えさせてくれる研究の一つではないでしょうか。

