702講義室
2026-07-24 22:25:00
内部表現はなぜ簡単には変わらないのか
第2部 脳科学・認知科学から考える現実とは何か
第3章 内部表現はどのように変化するのか
第6回 内部表現はなぜ簡単には変わらないのか
私たちは、昨日まで信じていたことを、今日になって簡単に変えることはありません。
それは頑固だからでも、新しいことを拒絶しているからでもありません。
人は、これまで築いてきた内部表現との整合性を保ちながら世界を理解しようとするからです。
今回は、内部表現がなぜそれほどまでに変わりにくいのか、その理由について考えてみたいと思います。
前回、私たちは内部表現は新しい経験によって少しずつ更新されるものの、その更新は、今までの内部表現をできるだけ維持しながら行われることを見てきました。
では、なぜ私たちの内部表現は、それほどまでに変わりにくいのでしょうか。
実は、その答えは、内部表現そのものの役割にあります。
内部表現は、私たちが世界を理解するための土台です。
もし、その土台が簡単に変わってしまえば、昨日まで正しいと思っていたことが、今日はまったく違って見えてしまいます。
それでは、安心して生活することはできません。
だからこそ、人は無意識のうちに、自分の内部表現をできるだけ維持しようとします。
これは、新しいことを拒絶しているわけではありません。
新しい経験を取り入れながらも、これまで築いてきた世界の見方との整合性を保とうとしているのです。
考えてみれば、私たちの内部表現は、一日や二日で作られたものではありません。
幼い頃から何十年もの経験を積み重ね、そのたびに少しずつ修正されながら現在の形になっています。
家族との関わり。
学校生活。
友人との出会い。
成功や失敗。
喜びや悲しみ。
その一つひとつが積み重なり、現在の内部表現を形作っています。
それほど長い年月をかけて築かれたものが、一度や二度の経験だけで簡単に変わらないのは、ごく自然なことなのです。
さらに、人は新しい出来事に出会ったとき、その出来事だけを見て判断しているわけではありません。
これまで積み重ねてきた膨大な経験と照らし合わせながら、その意味を解釈しています。
つまり、新しい経験も、それまでの内部表現というフィルターを通して理解されるのです。
だからこそ、私たちは昨日と今日を連続した一つの世界として認識し、安定した日常生活を送ることができます。
内部表現が簡単には変わらないことは、決して欠点ではありません。
それは、人間が世界を安定して理解し、生きていくために備えている、大切な仕組みなのです。
しかし、その一方で、私たちは人生の中で、
「世界が変わって見えた。」
「価値観が根底から変わった。」
という経験を語る人にも出会います。
もし内部表現がこれほど強固なものだとすれば、そのような変化はどのようにして起こるのでしょうか。
それは、これまで見てきた「更新」と同じ現象なのでしょうか。
私は、そこには「更新」という言葉だけでは説明できない、別の変化があるのではないかと考えています。
次回は、内部表現は本当に書き換えられるのか、その可能性について考えてみたいと思います。
