AIゲーム開発研究室
第1回 AIゲーム企画のはじまり
ゲーム開発ドキュメント
第1回 AIゲーム企画のはじまり
はじめに
AIゲーム開発研究室では、ゲームの実制作を最優先とし、その制作過程で生まれた重要なテーマを研究としてまとめていきます。
本研究では、AIがゲームデザイナーとしてどこまで創造的な提案ができるのかを検証するとともに、人間とAIの役割分担を明らかにすることを目的とします。
前提
本研究では、人間とAIの役割を明確に分けたうえでゲーム制作を行います。
人間が担当するのは、
- ゲーム哲学
- 世界観
- 作品全体の構成
- 最終的な制作判断
です。
今回のプロジェクトでは、
- 「絵本の世界で遊ぶゲーム」であること
- 『おむすび山』という大きなゲームの中に、複数のミニゲームが存在する構成であること
この二点は、人間があらかじめ決定しています。
一方、AIには、その世界観の中で遊ぶミニゲームのアイデアを提案してもらいます。
つまり本研究では、
「世界を創るのは人間、世界の中の遊びを発想するのはAI」
という役割分担を前提として実験を行います。
実験
AIには、ゲーム哲学だけを与え、既存のキャラクターやストーリーなどの設定は一切考慮せず、純粋にミニゲームを提案してもらいます。
AIへの指示(プロンプト)
あなたはゲームデザイナーです。
次のゲーム哲学をもとに、子ども向けミニゲームを提案してください。
【ゲーム哲学】
「おむすび山とは、森からいただいた恵みを森へ返し、森とともに豊かになるゲームである。」
【前提】
・このゲームは絵本の世界で遊ぶゲームです。
・ゲーム全体は複数のミニゲームで構成されています。
・今回はミニゲームのみを提案してください。
・キャラクター、ストーリー、既存設定は考慮しないでください。
・ゲーム哲学から自由に発想してください。
・既存のゲームにとらわれず、新しい遊びも積極的に提案してください。
【作成内容】
以下の形式で10個提案してください。
・ゲームタイトル
・ゲームコンセプト
・ゲーム内容
・ゲームの目的
・このゲームで体験してほしいこと
AIから提案されたミニゲーム
- 森のどんぐりひろい
- 小鳥のおてつだい
- 川のおそうじ
- 木の実のお届け
- 花畑を育てよう
- きのこ探検
- 森の落とし物
- 雨あとの森
- 森の音あつめ
- 森へありがとう
実験結果
AIは「どんぐり」というテーマを重要な要素として捉えていました。
しかし、最初に提案したのは**「どんぐりキャッチ」ではなく、「森のどんぐりひろい」**でした。
さらに提案全体を見ると、
- 拾う
- 届ける
- 育てる
- 掃除する
- 森へ返す
といった、「循環」を中心としたゲームデザインが多く見られました。
AIは、「競争」や「勝敗」よりも、森との共生や恵みの循環を重視したゲームを提案する傾向が見られました。
制作側の判断
本プロジェクトでは、絵本との連続性を重視します。
そのため、第1のミニゲームについては、AIの提案をそのまま採用するのではなく、絵本第3話とのつながりを優先し、当初から構想していた**「どんぐりキャッチ」**を採用します。
一方、第2のミニゲーム以降については、AIの提案を出発点とし、人間がディレクションを行いながら、絵本とゲームを同時に制作していく予定です。
考察
今回の実験では、AIは「どんぐり」という重要なモチーフを正しく認識しながらも、人間とは異なる発想でゲームを設計しました。
これは、AIが単に人間の考えを模倣しているのではなく、与えられた世界観から独自のゲームデザインを生成していることを示しています。
また、本研究では、
- AIが自由に提案する工程
- 人間が作品全体をディレクションする工程
を明確に分離する制作方法を採用しました。
この役割分担は、AI時代のゲーム開発における一つの制作手法として有効である可能性を示しています。
まとめ
今回の研究では、
- 世界観を創るのは人間
- 世界の中の遊びを発想するのはAI
という役割分担のもとで、最初のゲームデザイン実験を行いました。
今後はゲームの実制作を優先しながら、制作過程で生まれる重要なテーマについて、引き続き「AIゲーム開発研究」として検証・記録していきます。
AIゲーム開発は、ここから始まる
AIゲーム開発研究室 研究実験 No.003【最終回】
AIゲーム開発は、ここから始まる
四回にわたってお届けしてきた「研究実験 No.003」も、今回で最終回です。
今回の研究では、一つのゲームコンセプトの中にあるたった一語を変更し、AIがどのようにゲームを設計するのかを比較しました。
その結果、AIは単に言葉を置き換えるだけではなく、その言葉の意味に合わせてゲーム全体を組み立て直す傾向が見られました。
ゲームの舞台が変わることもあれば、プレイヤーの行動が変わることもあります。
ゲームが大切にする価値観や、最終的な目的まで変化する場合もありました。
この結果から私たちは、一つの可能性にたどり着きました。
ゲームコンセプトは、ゲームを説明する文章ではなく、ゲームデザインを方向付ける設計情報として機能している可能性がある。
もちろん、これは今回の実験から得られた一つの考察であり、今後さらに多くの検証が必要です。
しかし、この研究を通して、AI時代のゲーム企画には新しい考え方が生まれるかもしれないという手応えを感じました。
AIがゲームを作る時代だからこそ、人が最初に考える「ゲームコンセプト」の重要性は、これまで以上に高まっていくのではないでしょうか。
AIゲーム開発研究室では、この研究を出発点として、今後もさまざまな実験を続けていきます。
ゲームコンセプトはどこまでゲームを決めるのか。
世界設定やキャラクター設定は、AIにどのような影響を与えるのか。
AIと人間は、どのように協力すれば、もっと面白いゲームを作れるのか。
まだ答えのない問いは、たくさんあります。
だからこそ、この研究は終わりではありません。
ここが、AIゲーム開発研究室のスタートラインです。
これからも、実際にゲームを作り、AIと対話し、検証を重ねながら、AI時代のゲーム開発方法論を少しずつ形にしていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回の研究実験も、どうぞお楽しみに。
AIはゲームコンセプトの何を見ているのか?
AIゲーム開発研究室 研究実験 No.003【第3回】
AIはゲームコンセプトの何を見ているのか?
七つの比較実験を行ってみると、一つの面白いことが見えてきました。
AIは、一語だけを見てゲームを作っているわけではなさそうなのです。
例えば、「森」を「世界」に変えると、ゲームの舞台は広がりました。
しかし、「森を大切にする」という考え方は、そのまま残っていました。
一方、「返す」を「分け合う」に変えると、ゲームの舞台はほとんど変わらないのに、ゲーム全体の考え方が大きく変わりました。
つまり、すべての言葉が同じ役割を持っているわけではないようです。
比較実験を整理していくうちに、私たちは四つの視点で見ると、とても分かりやすいことに気付きました。
- 世界(どこが舞台なのか)
- 行動(プレイヤーは何をするのか)
- 価値観(何を大切にするゲームなのか)
- 目的(最後に何を目指すのか)
七つの実験は、この四つの視点で整理すると、それぞれの違いが自然に説明できました。
もちろん、これは「AIの頭の中がこうなっている」と証明したわけではありません。
今回の実験で生まれたゲームを比較すると、この四つの視点で整理するのが最も分かりやすかった、ということです。
そして、ここで私たちは、この研究で最も重要な発見にたどり着きました。
ゲームコンセプトは、単なる作品紹介の文章ではありません。
AIにとっては、ゲーム全体の方向性を決める設計情報として働いている可能性があります。
もし、この考え方がさらに多くの実験で確かめられれば、AI時代のゲーム企画そのものが大きく変わるかもしれません。
これまでゲームコンセプトは、「どんなゲームかを説明する文章」と考えられることが多くありました。
しかし、AI時代には、「ゲームを生み出すための設計図」として考えることもできるのではないでしょうか。
今回の研究は、その可能性を示す第一歩になったと私たちは考えています。
次回はいよいよ最終回です。
今回の研究から見えてきたこと、そしてAIゲーム開発研究室がこれから目指す未来についてお話しします。
たった一語でゲームはここまで変わる
AIゲーム開発研究室 研究実験 No.003【第2回】
たった一語でゲームはここまで変わる
前回は、一つのゲームコンセプトをAIに渡してゲームを設計してもらう実験をご紹介しました。
今回は、その続きです。
私たちは、ゲームコンセプトの一語だけを変更し、そのたびにAIへゲームデザインを依頼しました。
変更したのは、たったこれだけです。
- 「返す」→「分け合う」
- 「森」→「世界」
- 「豊かになる」→「幸せになる」
- 「いただいた」→「集める」
- 「森とともに豊かになる」→「森を守る」
- 「森とともに豊かになる」→「森の秘密を知る」
人が読むと、どれも少し言い回しが変わった程度に感じるかもしれません。
ところが、AIが設計したゲームは予想以上に大きく変化しました。
例えば、「返す」を「分け合う」に変えると、ゲーム全体の考え方が変わりました。
「森へ返す」という循環を大切にするゲームから、仲間と協力し、恵みを分け合うゲームへと変化したのです。
また、「森」を「世界」に変えると、ゲームの舞台は一気に広がりました。
プレイヤーは一つの森だけでなく、さまざまな地域を旅しながら活動するようになりました。
一方で、「豊かになる」を「幸せになる」に変えると、お金や資源を増やすことよりも、人や自然とのつながりを大切にするゲームへと変わりました。
さらに、「集める」という言葉では、プレイヤーが積極的に探索し、資源を見つけることがゲームの中心になります。
「森を守る」では環境保全が目的となり、「森の秘密を知る」では探検や発見がゲームの中心になりました。
つまり、一語変えただけなのに、AIはゲーム全体をその言葉に合わせて組み立て直していたのです。
もちろん、この結果だけで「AIは必ずこのように考える」と結論付けることはできません。
しかし今回の比較実験では、一語の違いがゲームデザイン全体に影響を与える様子を、繰り返し観察することができました。
この結果を見たとき、私たちは一つのことに気付きました。
ゲームコンセプトは、単なる作品紹介ではありません。
AIにとっては、ゲーム全体の方向性を決める設計情報として機能している可能性があるのです。
では、その変化には何か共通した法則があるのでしょうか。
次回は、七つの実験を比較して見えてきた共通点を紹介します。
たった一文からゲームは作れるのか?
AIゲーム開発研究室 研究実験 No.003【第1回】
たった一文からゲームは作れるのか?
ゲームを作ると聞くと、多くの人はキャラクターや世界観、ゲームシステムなどを思い浮かべるかもしれません。
しかし、私は以前から一つの疑問を持っていました。
「ゲームコンセプトが少し変わるだけで、ゲームそのものも変わるのだろうか。」
AI時代になった今、この疑問は実際に確かめることができます。
そこで今回、AIゲーム開発研究室では、一つの実験を行いました。
実験に使用したゲームコンセプトは、たった一文です。
「おむすび山とは、森からいただいた恵みを森へ返し、森とともに豊かになるゲームである。」
AIには、この一文だけを渡し、ゲーム全体を設計してもらいました。
すると驚いたことに、AIはゲームの世界観だけでなく、プレイヤーの行動、ゲームの目的、報酬、エンディングまで、一つのゲームとして一貫した内容を提案してきたのです。
ここで、さらに一つ疑問が生まれました。
もし、この文章の中のたった一語だけを変えたら、AIはどのようなゲームを作るのでしょうか。
例えば、
- 「返し」を「分け合い」に変える。
- 「森」を「世界」に変える。
- 「豊か」を「幸せ」に変える。
ほんの少しの違いです。
人間なら「少し雰囲気が変わるくらいかな」と思うかもしれません。
ところが、AIは予想以上に大きな変化を見せました。
ゲーム全体の考え方や遊び方まで変わる場合があったのです。
そこで私たちは、同じ文章の中で一語だけを変更した七つのゲームコンセプトを用意し、それぞれについてAIにゲームを設計してもらいました。
果たしてAIは、どのようにゲームを作り分けたのでしょうか。
次回は、その中でも特に印象的だった七つの実験結果を紹介します。
たった一語が、ゲームをどこまで変えるのか。
一緒に見ていきましょう。
